2020年の教育改革で、文部科学省が小学校にプログラミングを必修科目として導入することが決まり、注目を浴びている理数教育、いわゆる「STEM教育」とは、一体何なのか?
また、一般にはまだあまり知られていませんが、理科に関しては、高校の指導要領に「理数探求」「理数探求基礎」という科目が新設されることになりました。
これは、従来の物理、生物、化学といった理科科目に追加される形で、21世紀型スキルに必須の問題発見力と課題解決力を育み、鍛え、雇用市場が求めるスキルと学校で習得できるスキルのギャップを少しでも埋めるための教育改革が、まもなく始まります。
現在(2017年度)、中学1年生以下のお子さんに影響があります。
今回は、「親が知っておくべき未来の用語シリーズ」として、聞き慣れないかもしれませんが、世界中で推進されている理数教育の「STEM教育」と、その派生語の「STREAM教育」についてまとめてみました。
はじめに
本題に入る前に、日本の学力は世界の中でどのあたりか、ご存知ですか?
じつは、PISA学力調査(2015年学習到達度調査、OECD非加盟国含む72か国対象)で、
[btn class=”bg-yellow big lightning”]科学リテラシー2位、数学5位[/btn]なんです。
日本人の子どもたちの理数系の学力が世界の上位に位置しているのは、喜ばしいことですね。うひゃー、かしこい!(・ω・ノ)ノ
この学力調査は、国の平均点ですから、アメリカや中国、ロシアのように、出来る人はものすごく出来るけど、国内の格差が大きい国は、点数上は不利になります。そのため、全体的に学力がおしなべて高い国が、ランキング上位に来ます。
その傾向自体は、とてもいいことだと思いますが、全体の学力も上げながら、
[btn class=”bg-yellow big lightning”]
✔ トップレベルの人材の学力をさらに伸ばし、トップ層を厚くしていくこと
✔ 理数教育が自分の将来に役に立つと思う学生の数を増やしていくこと
[/btn]
これらが、今の日本の理数教育の課題だと、理系子育てオタクのなごみは、ひしひしと感じています。理科は中学生になると、面白くないって思う学生さんが多く、そういう学校での理科に対する倦怠感が、理数系を志す学生がいっこうに増えない理由のひとつかな、と。
STEM教育とは
STEMは、Science、Technology、Engineering、Mathの頭文字を取ったアメリカ製の造語です。
[btn class=”bg-yellow big lightning”]STEM=科学、技術、工学、数学[/btn]
今後も需要増と新卒でも高収入が見込まれる理数系のSTEM人材ですが、不足を補うため、初等・中等教育から理系を重視し伸ばしていく教育方法のことを、STEM(ステム)教育と呼びます。
アメリカで始まったSTEM教育ですが、北欧のフィンランド、アジアのシンガポールなどのSTEM教育先進国を筆頭に、
「第三世界」と呼ばれるアフリカ・アジア・ラテンアメリカ地域にも、ここ数年で、広がりを見せています。
とくに、ケニア、ブラジルなどは、理系出身のベンチャーCEO兼新しいタイプの教育者を、何人も輩出しています。
ブラジルでは、社則のない会社を経営する新時代の社長さんの運営する私立小学校で、自転車を部品を組み立てて作ったり、スマホ連動のロボットやドローン(quadro-copter)を操ったりと、独自の面白いカリキュラムが、TEDスーパープレゼンテーションで紹介されていました。
学校でのSTEM教育については、教育界の方々よりも、IT系起業家やカリスマ経営者など財界のエリート層の方が、その必要性を強く訴えています。未来の社会の変貌がより実感を伴って推測できるからこそ、STEM人材の育成に積極的で、彼らを社会を変える原動力にしようとしているのだと思います。
では、STEM教育の、Science、Technology、Engineering、Mathについて、順に見ていきましょう。
Science
「科学」という言葉は、とても広い意味を含んでいて、自然と人間についての観察・実験を伴う学問すべてを指す場合、
経済学や社会学なんかも、科学領域に入っていましいますが、STEM教育で言うところのScienceは、おもに「自然科学」を指しています。定義を狭めたつもりですが、それでも広範囲。
生物学、物理学、化学、薬学、医学、天文学(宇宙含む)、地学、海洋学などなど、様々な自然現象を観察したり、実験したりして、真理や法則を見つける学問です。
遺伝子解析や遠隔手術などで注目を集める生命・医療分野は、科学のなかでも、21世紀中に、特に発展が見込まれています。
こちらの『2100年の科学ライフ』(ミチオ・カク著)に、未来の科学の発展について詳しく書かれていますので、これから伸びる分野や、ご自分やお子さまへの生活への影響を覗いてみたい方は、一読をオススメします。分厚いですが、読み応えも新鮮さも申し分ないです!
Technology
「技術」の定義も、科学と同様に、かなり広範にわります。
科学ー技術ー工学の三者は、密接に結びついて発展してきており、ニワトリとたまごの関係に似て分けがたい存在です。
工学には技術が必要不可欠だし、科学を探求するからこそ技術が発展します。
ただ、あえて範囲を絞って業界を挙げるとしたら、情報工学などハイテク分野の学問でしょうか?
昔は重くて大きかったパソコンが、薄いスマホに集約された今、ハイテク業界では、国ぐるみで襲ってくるハッカー集団から重要インフラシステムを守るためのセキュリティ対策や、スマートシティを実現するためのセンサー、制御、クラウドなどの技術、パソコンを遥かに凌ぐ「量子コンピュータ」の開発にむけたプログラミング言語の開発、AIのディープラーニング、フィンテックにブロックチェーンなどなど、Techワールドではホットな話題には事欠きませんし、人材需要はこれからも旺盛です。
なごみは、こちらの本と雑誌を読んで、ブロックチェーンについて、ざっくりですが理解しました。マイニング業者は今や中国の独壇場らしいですが、日本のベンチャーも挑戦しているようです。応援したいです!
Engineering
工学は、一言でいえば、ものづくり。
物理学や数学をもとにして、ひとの暮らしに役立つ物や環境を作りだすための学問です。
自動車の内燃機関や航空工学、土木工学の発達により、人間の移動手段は大いに進化しました。
昔は、どう頑張っても馬車だったのが、今じゃバイク、車、飛行機は当たり前。
クルマの無人自動運転の解禁だって、目前に迫ります。(アメリカの話です。日本では慎重~に進行中。)
機械工学、素材工学、電子工学、宇宙工学、遺伝子工学、などなど、「〇〇工学」は芋づる式に増やせます。
Math
数学は、実験なしに、理論上で真理を追究する学問なので、Scienceの自然科学からは、切り離されて定義されていますが、計算・空間把握能力など、基礎的な数学は、すべての理数教育のもとにあるものです。
速く大量に計算する能力は、演算の得意なコンピュータにはかないませんが、ブラックボックスの中にある数式を導くことができる数的能力は、必要だと思います。
その能力を引き出すために、小学校での計算ドリルは、やっぱり大事だなと思う、今日この頃。
<関連記事>
理系脳を育てる親子の理系子育て必読書・厳選5冊(STEM教育)
STREAM教育とは
そして、STEM=科学、技術、工学、数学の4分野に、
最近、重視されるようになってきた、Robotics、Artを加えたものが、STREAM(ストゥリーム)。
Robotics
人口減少をまもなく迎える超少子高齢社会の日本は、ほかの先進国の政治家や研究者達から、静かに大注目されています。
この、静かに、確実に迫り来る、経済縮小と国力逓減の国難を、一体どうやって克服するんだ?ってね!
そこで、頼みの綱として、幅広い産業が投資しているのが、ロボット。
もともと、自動車の組み立てや食品工場など、国内のオートメーション化された工場には欠かせない存在のロボットでしたが、
ヒト型ロボットも、相次いで登場。
日本科学未来館(東京都台東区)で会えるホンダのASIMO(アシモ)や、ディアゴスティーニのRobi(ロビ)、村田製作所の踊るロボット(リオ五輪の閉会式のパフォーマンスが未来的だった!)、ソフトバンクのPepper(ペッパー)くんなど、
ヒューマノイドロボットが、人間を助けながら、家族の一員のように暮らす未来をイメージするには、
ドラえもんだけでなく、SF本やSF映画に触れてみると、より具体的に想像できるようになります。
『Ghost in the Shell(攻殻機動隊のハリウッドリメイク版)』には、AIと人間とロボットの融合した主人公が出てきますが、われわれ人間存在の行く末について、なごみは、かなり考えちゃいました。
こわい映像が出てくるので、親御さんだけで、または、中学生以上ならお子様もご一緒にどうぞ。
Art
Apple社のデザイン重視の製品設計のもと生み出されたスマホが、世の中を急激に変えました。
Airbnbの創始者メンバーに美術大学出身のアイディアマンがいたり、
生命工学とアート、数学とアートを融合させる新しい試みが、世界各地で行われていたりと、
Artは、その高いデザイン性で、人間の感性に、脳の潜在意識に、強力に働きかけていくため、今後、プロダクトデザインのみならず、他分野とのコラボにより、存在感を増していくようになると言われています。
STEM教育(STREAM教育)も重要ですが、並行して育ててあげたい、21世紀型スキルが身につく子育てについては、こちらの本も参考になります!
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。